底辺で生きるということ【MOTHER マザー】ネタバレ・レビュー

底辺で生きるということ【MOTHER マザー】ネタバレ・レビュー
https://eiga.com/movie/92550/gallery/
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おすすめ度

何も学ばず世間から孤立してしまえば、それがどれだけ狭い世の中になってしまうのか。
おすすめ度:★★★☆☆【3点】

あらすじ

男たちと行きずりの関係をもち、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子は、息子の周平に異様に執着し、自分に忠実であることを強いてきた。そんな母からの歪んだ愛に翻弄されながらも、母以外に頼るものがない周平は、秋子の要求になんとか応えようともがく。身内からも絶縁され、社会から孤立した母子の間には絆が生まれ、その絆が、17歳に成長した周平をひとつの殺人事件へと向かわせる。
引用元:映画.com

感想

長澤まさみの分岐点になろう作品。
私のわがままだができれば「性」に流され、時には武器に使う役柄だっただけに、ここで脱いでも良かったんじゃないかな。。でもそれだと脱いだだけが話題になってしまい、映画のテーマがブレてしまいますかね。

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働きもせず金を無心することしか考えていない母親。その母親の下歪んだ愛で育つ子供。

母親は両親と妹がいる家庭で、たぶん大人になるまで不自由ない生活は送ってきたのだと推測される。しかし勉強ができなかったのか進学した妹のことを妬んだりするところを見るとそこから折れ曲がってしまったよう。にしてもモンスターを生むには弱いエピソードで、何故このような母親が生まれたのかは作中ずっと気になってしまった。

しかしこのようなモンスターはいつどこでも生まれるというメッセージならこれ以上怖いことはない。

子供にお金を借りに行かせ、借りられないと激怒し再度行かせる。鬼畜の所業。明るいイメージの長澤まさみが子供にキレる絵面はホント新鮮。

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最初はこんなだらしない母親役をパーフェクト美人の長澤まさみが合うのかと思ったが、美人だったから楽をして生きてしまったツケだと考えると十分納得できる。

あと長澤まさみだから絵になる顔のアップ。ダメ男とはしゃぐ満面の笑みから無気力で生気が無い顔、そういう顔の変化もこの作品の素晴らしい点だと思う。

後半から時が飛び、妹も登場するが路上生活の長さを物語る服の汚れが絶妙でたまらない。ああ長澤まさみがこんな汚い服を着てるとは。。そして人生にかなり疲れたのか後半は殆ど笑顔がなくなる長澤まさみ。それがまた美しいのがすごい。

最後少年は母親の命令で祖父母を殺してしまうのだが、その理由はお金が欲しいから。計画的なものではなく、行けば文句を言われ貸してくれないから殺せば簡単に金が入るというだけ。ホントに唖然とする動機で人生をフイにしてしまう。

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人は学ばないと非常に狭い世界で完結してしまうのだと痛感。底辺で非常に不味いのは学ぶことの順位を下げてしまい次第に放棄してしまうことではないだろうか。

タイトルから予想されたのは、母親の愛は強い!かと思ったがそれは違ったようで、結局少年は母親の愛しか知らなかっただけ。母親は言い逃れ(最後の最後も鬼畜の所業!)自分だけ実刑を受けても最後の「お母さん好きなんです」発言は残念だがそれしか縋る愛が無いだけである。悲しい。

その悲しさを倍増させたのが、夏帆が演じる福祉施設の援助である。勉強をさせようと不登校生などが集まる施設に学ばせに行かせ、そこで少年は学ぶ楽しさを徐々に知り始める。援助の感謝も感じ、しっかり生きようという芽生えも感じた。

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だがダメ男のせいで夜逃げ状態になり学ぶこと諦めてしまう。

この時少年は自分は残って「勉強したい」と初めて母親に反発。大きい変化を感じられたのだが、結局母親に飲み込まれ共に行動する。あそこで親と別れ学んでいれば結末は違ったはず。

祖父母を殺した後、そのお金でホテルに泊まり家族3人幸せの象徴「川の字」で寝るのだが、意図的に90度ずらしし「川」を横向きにさせたのは結局は駄目だったことの暗示なんだと思う。これまた悲しい。

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非常に陰惨で救いようのない映画だが、「新聞記者」を手掛けた制作会社だけに観ているものへの問いかけはグサッとくる。

あと後半の少年時代を演じた奥平大兼。非常に惹きつけるものがあり大注目の俳優さんがまた現れました。

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データ

製作年:2020年
上映時間:126分
監督:大森立嗣
キャスト:長澤まさみ/奥平大兼/阿部サダヲ/夏帆/皆川猿時/仲野太賀/土村芳/荒巻全紀/大西信満/木野花/郡司翔/浅田芭路

リンク

映画.com

予告

心に残ったロケ地

何度も出てくる、母親が子供命令する場所
下新倉氷川八幡神社
〒351-0111 埼玉県和光市下新倉3丁目13−33

おすすめ度:★★★☆☆カテゴリの最新記事