
おすすめ度
許されざる秘密を告げる。
おすすめ度:★★★★☆【4点】
あらすじ
父の日登志が亡くなり、カメラマンの東麟太郎は葬儀のために故郷に帰ってきた。通夜の準備を進める中、母のアキコが通夜ぶるまいの弁当を勝手にキャンセルし、自分で料理を作ると言い出す。母が運んできた料理は目玉焼きだった。母が作る数々の手料理を食べていく中で、家族のさまざまな思い出が去来していく。
引用元:映画.com
感想
子持ち同士が再婚し新しい家族の物語。
食事シーンは多いものの、何一つ豪華なものは無くどの家庭のにも並ぶようなものばかり。父が最初に作った料理は目玉焼きにハムと間違えてスライスチーズをトッピングしたものから、元の家族の環境により子どもたちが味噌汁の味噌で喧嘩するが結果合わせ味噌になるなど、なかなか面白い。

そしてそういう出来事が思い出話となり、お互い生活がバラバラなったものの「家族」なんだと実感する。
話は、お互いが家族になって長男が出ていくまでの数年間とそれから数年たった現代の通夜を交えながら進んでいく。過去編は長女を演じた森七菜が良かった。もう20歳に近いが小学生役まで演じたのはすごい。

現代編の兄弟は、名役者を揃えた感じ。染谷将太、戸田恵梨香は言わずもがな素晴らしい演技!

しかし終盤出てくる窪塚洋介が一気に作品を締めた感じがします。あの佇まいはさすが。泣くシーンもほんと良かった。

過去編で、父は血は繋がっていない側である長男に自分の趣味である登山を教えます。そしてそれが寡黙な男たちのギスギス感を埋めていくことに。良い話。
またそこから時が経ち、長男も厳しい登山について来れるようになったそんな冬登山での際、山小屋宿泊時にある話を切り出しました。美味しいそうな即席ピザを食べながら。。劇中ではそれは明らかにされませんが、それが原因で長男は出ていきます。
その内容はなんだったのか。
劇中最大の闇となってますが、現代編の通夜遅くに明らかにされます。
それは健全な再婚ではなく不倫の末の略奪愛だったのでした。つまり子供としたら片親は現両親に裏切られ、引き離されたということになります。
山小屋でそれを聞いた長男も、現代の二人も受け入れず許しませんでした。悲しい大人のわがままを。
うまいと思ったのは、告げるのがどちらも血が繋がっていない同士なのです。
父と長男。母と長女・次男。あなたに言われたくないという感情も含まれるのか。戸田恵梨香の激昂が心を揺さぶります。
長女は旦那と子供二人で来てますが、旦那との関係は冷めてしまってる感じ。通夜に来た地元の男性となんとも匂わす発言。そんな経緯があるだけに自分をも責めたのでしょうか。
長男は通夜遅くにやってきます。兄弟二人はもう逢えないと思ってただけに再会に驚き。長男は突如すき焼きを作ります。
なぜ作ったかというと、父の生残にすき焼きを作ってあげ、それが父が最後に口したものとなったからです。最後に口にしたという「最後」をこちら側にわからせる描写がすごかった。箸を持つ力もなく、卵に包まれた肉をツルンとお椀に落とすも気づかず、卵のみをもぐもぐし美味しいという父。
もう余命幾ばくもないのが明白。それを観て長男は涙します。
通夜で作ったすき焼きは、親族にはそのままのすき焼きをだし、家族のみ台所にあるテーブルに集まり隠し味として「食べるラー油」を入れるのでした。なんかこういう些細な特別感たまりません。些細であるが最高である!

出ていく選択をした長男でしたが、その後登山家と成功し今後エベレストに登ることが決まっています。これも熱い展開!
いろんな、ホントいろいろな思いを人々は抱え生きていき、そして様々選択が人生を変えていくのだが、その中で最良な選択なのではないでしょうか。かっこいい生き方。
激動の通夜が明け、今まで言えなかったことや感情を出し切ったからなのか、火葬後の帰宅場面ではみんな清々しい面持ち。

最後は次男の彼女が待っており、新しい家族を匂わせ終了。
家族とは何なのかという問いを、不倫が騒がれる昨今改めて考えさせられる作品でした。監督さんが7年という長い年月で生み出しただけの傑作です。
データ
製作年:127分
上映時間:2018年
監督:常盤司郎
キャスト:染谷将太/戸田恵梨香/窪塚洋介/斉藤由貴/永瀬正敏/森七菜/楽駆/牧純矢/外川燎池田成志//菅原大吉/カトウシンスケ/山本浩司/奥野瑛太
リンク
予告
心に残ったロケ地
太郎の彼女が待っていた場所
長野県上田市小泉