おすすめ度
家族という人間模様を浮き上がらせる
おすすめ度:★★★★★【5点】
あらすじ
東京の下町。高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、社会の底辺にいるような一家だったが、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることに。そして、ある事件をきっかけに仲の良かった家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密や願いが明らかになっていく。
引用元:映画.com
感想
是枝監督作品。
映画ファンのみならず一般的にも人気が定着してきた監督作品にパルムドール受賞がプラスされ公開から3週間でもかなりの賑わいでした。
普段は自宅でヘッドホンしながらの映画鑑賞ですが、今回ミッドタウン日比谷にあるTOHOシネマズで鑑賞。450名以上入れる日本屈指の大型ホールながら皆さんマナーが良く映画に集中でき、上映後の明るくなる際にああこんな人が居たんだと異空間に切り替わったのが印象的でした。
監督作品らしく些細な部分にその人間模様が映し出されていき、説明無くともその人物が深掘りされていきます。非常にうまい。樹木希林のミカンの食べ方なんて斬新でたまりません。
今作で大きなテーマとなっている「家族の絆」。
それを大事に描きながらも絆があれば全てOKとならなかったのが自分にとっては良かった。
家族団らんで食事をし家族の本質を知ってるように語る夫婦。しかし当然発生する親としての責任が欠如しており何も責任を取ることをしない。大事な息子と言いながらも主人公に残酷な決断をあっさりしてしまうあたり一番わかりやすい。
終盤明かされていく家族の正体。その事実はゾッとし心底ダメ人間だったのかと落胆。
しかしそれでも家族に憧れる。親の責任を果たせなくても真っ当に生きることが許されなくても家族の幸せを味わいたい。なにかと理由をつけて万引きをしてたが、子供さえも理由をつけて万引きし家族を成立させる。
終盤、正義とされる側から偽家族のことを愚直に問いかけられ、涙が止まらない母親。長い間アップで映し出されるこのシーンは映画最大見せ場であり正直自分もやられました。パルムドールで絶賛されたシーンなのもうなずける。安藤サクラ凄い!
責任を取らないと書いたが最後に責任を果たす母親。あの言葉がメモなしで言えるということはいつか言おうと大事にしていたのだろう。そう思うと泣ける。
主人公が子供ながらに感じていく家族と思われる人達のダメさ加減。しかしそれでもなお切れない絆。人の繋がりを改めて考えさせられます。主人公が揺れ動いていく様は非常にうまく描かれていました。
主人公を演じた超イケメン子役、城桧吏(じょうかいり)。どのシーンも絵になりすぎ!この子の成長に日本中が楽しみにしていくのではないだろうか。
これでもかとバストを見せつけてきて気まずさ爆発で会場を凍りつかせた(脱いではいませんよ)松岡茉優。大事な事は知ってそうで実は子供のまま大人になってしまった父親役を熱演したリリーフランキー。どちらも本当素晴らしい。
そして圧巻なのが樹木希林。優しさに溢れながらも実は恐ろしい考えを持っているおばあちゃんを演じます。
今回映画を観ながらもちょっと観るに耐えない老いを感じ、ちょっと映像作品としては厳しいんじゃないかと思っていたのですが、パンフレットを読むに樹木希林自らそう観えるよう髪を長くし入れ歯を外して演じたようでした。つまり自分が映画外まで感じたところまで演じてたわけで、いやはや恐るべし樹木希林!!
端役や名前がない役までに贅沢な俳優を配置させ、この映画全体のクオリティは究極まで登りつめています。
最後主人公がバスで伝えたかった無音の言葉はなんなのか。それだけでも語り明かせてしまう映画です。
データ
製作年:2018年
上映時間:120分
監督:是枝裕和
キャスト:リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/池松壮亮/城桧吏/佐々木みゆ/緒形直人/森口瑤子/高良健吾/池脇千鶴/柄本明/樹木希林