心に残るあのスペシャルな日【ここは退屈迎えに来て】レビュー

心に残るあのスペシャルな日【ここは退屈迎えに来て】レビュー

Advertisement

おすすめ度

フジファブリックの楽曲が胸を打つ。
おすすめ度:★★★★★【5点】

あらすじ

東京で就職したが、10年経って何となく地元に帰ってきてた27歳の「私」は、実家で暮らしながらタウン誌で記事を書く仕事をしているが、冴えない日々を送っていた。そんなある日、高校時代の仲間と久しぶりに会った勢いで、高校時代にみんなの憧れの存在だった椎名くんと会いに行くこととなった「私」の中に、椎名くんとの忘れられない過去が去来する。そして、東京への憧れと怖さを抱きながら地元を出ないまま、元彼である「椎名」を忘れられずに暮らしている「あたし」。日常に充足感を覚えることができない2人の女性と彼女たちが足りない「何か」を埋めてくれると期待されている1人の男性のそれぞれの思い、そして現実が描かれていく。
引用元:映画.com

感想

誰でも青春時代に体験したスペシャルな日は存在するのではないだろうか。
今作では学校内で誰もが注目される存在にゲーセンに誘われ楽しく遊んだひととき。

たった1日それだけなのだが、その思い出を数年たった今でも自分のステータスとして生きている。

主人公を演じる橋本愛が口に出さずともその些細な心境を顔だけで表現している。もうそれだけでこの映画は満点なのである。

作品は「桐島、部活やめるってよ」に近いスクールカーストを扱った題材ながら、重きは彼らのその後を扱った内容。10年という月日を過ぎるとこの関係はどうなっているのか。そこには何が残っているのか。。

構成は非常に面白く。10年の間を様々な人間模様で行き来する。ただ何年というテロップが出るだけで説明もなく最初はかなり戸惑うが最後に繋がり合い深みを増していく。うまい。

基本淡々としている会話劇が多いのだが、これまたユニークなのが車内トークが多いこと。しかもかなりの長回しでしっかり道路を走っているので距離計算など大変だったと思うし、なにしろ演者の緊張感もかなりあったと思う。

また車内トークって心境を吐露するには良いシチュエーションであり、なにげに作品の推進力にもなっている。なるほどバラエティ番組で見かけるのもうなずける。

この映画車描写のこだわりはまだ続いてて、各演者たちが乗る車にもしっかり性格が出ており作品上重要な要素。さすが地方都市を描いた作品で車社会を表している。特に主人公たちが乗るフォードが東京帰りを意地でも出してる感じが良かった。あと車が止まる構図が遠目なのが驚いた。通常引きの絵の場合手前側で車が停まるものなのだが、なぜか道路の向こう側で小さく車が停まるのがとても印象的。社会に埋もれてる日常を表してるのかな。

学生時代のプール清掃での楽しいひと時、あんなことあったら一生話したくなる出来事なのは間違いない。先生まではしゃいでるのがまた良かった。そしてそこに学校中の注目の的である存在とその時間を共有できたのなら、他クラスや他学年への優越感にひたり自分は特別なんだと思ってしまうのもうなずける。たまたま同じクラスだったとしてもである。

終盤主人公にある衝撃的な言葉がかけられます。
信じがたい言葉とはこのことだろう。橋本愛が演じる笑顔の狼狽がなんとも印象的で見てられない。この映画を集約させる出来事であり主人公が他の人と違う設定(主人公ともう一人の共通設定)なのが活きてくる展開でもあった。すごい鬼演出である。

そして橋本愛と同じく今作を語る上で切り離せないのが音楽を担当した「フジファブリック」。

エンドロールを始め多くの楽曲が流れるが、作品とクロスする場面として「茜色の夕日」をリレー形式で歌っていく場面がある。なんとも奇妙ながらも歌詞内容がそのパートを歌う演者とリンクしており切なく涙を誘う。。

お見事過ぎるこの演出に今まで映画を観てきて良かったなと思う次第です。

データ

製作年:2018年
上映時間:98分
監督:廣木隆一
キャスト:橋本愛/門脇麦/成田凌/渡辺大知/岸井ゆきの/内田理央/柳ゆり菜/瀧内公美/亀田侑樹/片山友希/木崎絹子/マキタスポーツ/村上淳

リンク

映画.com

予告

心に残ったロケ地

「あたし」が「茜色の夕日」を歌い始める場所
富山県富山市県道55号線 空港橋

おすすめ度:★★★★★カテゴリの最新記事