
おすすめ度
クライマーズ・ハイの名言「下りるために登るんさ」が甦る。
おすすめ度:★★★★★【5点】
あらすじ
日本と欧米の対立が激化する昭和8年、日本帝国海軍上層部は巨大戦艦・大和の建造計画に大きな期待を寄せていたが、海軍少将・山本五十六はその計画に待ったをかけた。山本は代替案を提案するも、上層部は世界に誇示する大きさを誇る大和の建造を支持していた。山本は大和の建造にかかる莫大な費用を算出し、大和建造計画の裏に隠された不正を暴くべく、天才数学者・櫂直を海軍に招き入れる。数学的能力、そして持ち前の度胸を活かし、大和の試算を行っていく櫂の前に帝国海軍の大きな壁が立ちはだかる。
引用元:映画.com
感想
映画の最後に待っている「戦艦大和」製造の真意!
これはフィクションによる希望的観測ながら観たものを唸らせる着地点だったと思います。この解釈によりなにか救われる気もするし、あの時の日本はどうかしてたんだと思う。
これを観て感じたのはクライマーズ・ハイの名言「下りるために登るんさ」で、正直読んでた時はあまり良くわからなかったのですが、この映画を見て完遂したというか意味がホロッと理解できました。ありがとう!

映画自体は、時代は空母と謳う山本五十六が戦艦推進派の大和製造を止めるべく話が進みます。しかし映画序盤では大迫力の大和撃沈シーンが描かれています。つまり主人公側が目論む戦艦製造停止は叶わなかったことがすでにわかっているのですが。。これが面白い。

その面白さの1つは主人公「櫂直」の魅力でしょう。この数学の天才を菅田将暉が熱演。終盤解読不可能の数式をしっかり黒板に書いていくシーンは圧巻。菅田将暉本人は理解して書いたと言ってるのであらためてすごい役者だと思います。
序盤のややこしい関係性も導線も非常にスムーズなので頭に入りやすく、物語も主に2週間の出来事なので最後に何があるか明確で話に乗りやすくまたテンポも終始良かった。
また主人公と世話役のバディものも最高で、最初は世話役が主人公を認めないものの階級が偉く上のため仕方なく動き、徐々に天才ぶりに感化され心酔していくさまは観ていて胸が熱くなっていきます。
結果会議に間に合い、相手の見積もり不備を明確にするのだが、、「え」という内容へ流されていきます。今まで何だったん?と。。

しかしその後数学の天才設定が最大に発揮されるカタルシスが待ってました。
戦艦大和の本当の製図と主人公が情報がない中作り上げた製図では構造が違っていた。当然そうなるんじゃないのと思う中、相手が作った大和は10年に一度級の台風では転覆する構造を主人公が発見。主人公はそれさえも想定した正確な製図を作り上げていたのです。ここで相手側の設計者がミスに恥じて戦艦大和製造案を取りやめます。
だがその後、主人公は設計者から誰にも伝えてない戦艦大和製造の真意を聞かされます。一度戦艦大和を(製図で)作り上げてしまった主人公がそれ聞いて悪魔に魂を売ったのか売ってないのか。。時が一気に飛び戦艦大和出向の日へ。大和を見送った主人公が涙し映画は幕を閉じます。

主人公が真意を聞いた後、どこまで大和に携わったのかは不明。そこも良い切り分けだったと思います。
映画冒頭に流れるVFXで大迫力に描かれた撃沈シーン。真意を知ってから観るとまた意味が違ってきて唸らせます。
また真意云々ではなくこれだけでも映画屈指のVFXシーンだと思います。

その中で少し毛色が違ったシーンがあります。
連装機銃で見事アメリカ側の戦闘機を撃墜。隊員はヤッターと喜ぶもアメリカ側はすぐに脱出したパイロットを救出。その手際の良い救出劇をあちらは何をしてるんだと言葉を無くし見つめる連装機銃隊員。アメリカの人員こそが大事という考えと、そこまで考えに及んでない日本側。
撃沈シーン内では異彩を放つ数秒でしたが、麻痺してしまっている日本、そして「真意」の必要性を更に上げているので入れて正解だと思います。
データ
製作年:2019年
上映時間:130分
監督:山崎貴
キャスト:菅田将暉/柄本佑/浜辺美波/笑福亭鶴瓶/小林克也/小日向文世/國村隼/橋爪功/田中泯/舘ひろし
リンク
予告
心に残ったロケ地
大里造船会社
神戸市兵庫区島上町 旧加藤海運本社ビル