「おっぱい」という未確認物体への好奇心【ペンギン・ハイウェイ】レビュー

「おっぱい」という未確認物体への好奇心【ペンギン・ハイウェイ】レビュー


Advertisement

おすすめ度

夢か現か。その世界観を描くためにアニメはあるのではないだろうか。
おすすめ度:★★★★★【5点】

あらすじ

毎日学んだことをノートに記録している勉強家の小学4年生アオヤマ君は、通っている歯医者のお姉さんと仲良し。お姉さんも、ちょっと生意気で大人びたアオヤマ君をかわいがっていた。ある日、彼らの暮らす街に突然ペンギンが現れる。海もないただの住宅地になぜペンギンが現れたのか。アオヤマ君は謎を解くべく研究を始めるが、そんな折、お姉さんが投げ捨てたコーラの缶がペンギンに変身するところを目撃する。
引用元:映画.com

感想

怒りそうになったら、おっぱいのことを考えるといいよ。そうすると心が大変平和になるんだ
小学4年生アオヤマくんの名言です。

現実と非現実の世界に線を引かずなんとも表現できない世界を描く森見登美彦原作。
今作はかなりファンタジー要素が多く今までの森見原作アニメとしても一線を画す。

しかし少年が主人公の今作はこの爽やかさな絵柄が非常にハマっており、「おっぱい」というキーワードがたくさん出てきてもいやらしくなく清潔感ある作品になってるのは素晴らしい。

ちなみにお姉さんの大きく魅力的な胸が「たゆん」とするシーンはありますが、おっぱいへの表現はそこまでで性的描写は一切ありません。(がっかりネタバレでしたね。)その理由は後で書きます。

小学4年生アオヤマくんは素直で研究熱心。ノートが喜ぶという表現があってるかわからんがあんなに熱心に書き込み埋まっていくのならノートも本望だろう。

そしてその一環でお姉さんのおっぱいをも研究対象なのである。その熱心で真面目ぶりは「おっぱい」というキーワードに赤面する友人を余所に最初に記載した名言が出てくるくらい。

しかしそれ以上にミステリアスなお姉さん。街で起こる不思議な現象とお姉さんがリンクしていることに気づき始めるアオヤマくんはお姉さんそのものを研究対象に。お姉さんも好意的でアオヤマ少年に研究対象として協力的なのもなんともたまらいない展開である。

お姉さんと二人きりの夏の思い出。なんともセンチメンタルで胸がキュンキュンする。

その他夏の思い出としても夏休み中に友達3人だけの秘密の場所で過ごすという展開もたまらない。

序盤はペンギンが突如現れ消える不思議な現象があるもののなんとなく現実よりの世界から、中盤「海」の存在から決定的にファンタジーになっていく。その後「海」が大事になり最後のペンギンハイウェイが始まっていく。

最後の展開はああこれがアニメなんだと思った。ペンギンたちが大集合しそれだけでも心躍るのに、見慣れた住宅街が宙を舞い観たこともない世界に切り替わっていく。イマジネーションの大洪水!こういう展開こそがアニメーションの真骨頂!映画屈指の疾走感でした!

エンドクレジットの宇多田ヒカルの曲もセンチメンタルさを煽り素晴らしい余韻を残してくれる。

このなんとも言えない世界観。この作品はアオヤマくんの世界なのです。
だからアオヤマくんが想像できない知らない世界にはいけません。あの不安を煽る電車シーンがそれを表している。

海に行ったことがないアオヤマくん。お姉さんや友人と海を目指すも変化のない電車からの風景に自分たち以外載っていないガランとして車内。そして何かしら起こりいつも同じ駅から先に行けない。これは知らない世界への不安、本能的な行動停止を表しているのかも知れません。

アオヤマくんの精神と思っていくとお姉さんを中心として不思議な現象が紐解かれていく気がします。お姉さんの「おっぱい」もそこ止まりなのはそういうことなのだと思う。単純にアニメとして面白い作品ですが謎が多くいろいろ考察要素がありより楽しめるのかと。

あとこの作品が愛おしくなる描写として「歯」があります。
アオヤマくんの歯が抜けそうでガタつき始め気になって触ってる感じが非常初々しく。そしてお姉さんに抜かれドバっと血が出たり、歯がない場所を舌でレロレロする描写なんてがたまらない。なんでしょうこの描写だけギュンと少年期を思い出し急激にアオヤマくんと一体化してしまいます。うまい!

作品を観た後、少年期何を思い何をしてきたんだろうかとしばらく思いを馳せてしまう素晴らしい作品でした。

データ

製作年:2018年
上映時間:119分
監督:石田祐康
キャスト(声の出演):北香那/蒼井優/釘宮理恵/潘めぐみ/福井美樹/能登麻美子/久野美咲/西島秀俊/竹中直人

リンク

映画.com

予告

映画を観て欲しくなった1品

おすすめ度:★★★★★カテゴリの最新記事