意思疎通の大事さを改めて【愛しのアイリーン】レビュー

意思疎通の大事さを改めて【愛しのアイリーン】レビュー

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おすすめ度

木野花の怪演に圧倒される
おすすめ度:★★★★☆【4点】

あらすじ

42歳まで恋愛を知らず独身でいた岩男が、久しぶりに寒村にある実家に帰省する。しかし、実家では死んだことすら知らなかった父親の葬式の真っ最中だった。そんなタイミングで帰ってきた岩男がフィリピン人の嫁アイリーンを連れていったため、参列者がざわつき出し、その背後からライフルを構えた喪服姿の母親ツルが現れる。
引用元:映画.com

感想

心をえぐる作品を取り続けてる吉田恵輔監督作品。

原作は新井英樹の漫画。他の作品は読んだことがあるものの今作は読んでおらずただ凄まじい作品なのは予想していた。

たぶんこの映画は相当の覚悟を持たないと女性は観てられないだろう。
あれだけ女性を侮蔑し放送禁止用語を連発。こんだけ女性を蔑む映画もない。

ただそういう背景があってのラストシーン。豪雪地の真っ白な空間で起きる二人の女性のやり取りが意味を持ってくるのではないかと思う。

最近聞く「子どもおじさん」そのままの主人公。性欲に愚直すぎてその処理に関しては目も当てられないことばかり。いやまあこういうのは秘め事なので当人たちが理解し合えればそれで良いのだが、それにしても呆れることばかり。

そしてもうひとりの主人公と言ってもおかしくない息子を溺愛しすぎる母親役を演じた木野花。
普段は日本のお母さんというもの優しい女性を演じているが、今作は放送禁止用語言ったりとにかく汚い言葉を吐きまくります。そして猟銃を持ってのあと一歩で人を殺す目。いやはや凄すぎる。

フィリピン人のお嫁さんを演じたナッツ・シトイも非常に良かった。

日本にお嫁さんに来るも日本語がしゃべれず双方言葉が理解し合えない。つまり心の行き届いた意思疎通ができないというこれこそが今作の重要なポイントと言えるかも知れません。

最初は優しく言っても伝わらず、結局羞恥心も無く侮蔑した言葉や野蛮な行動になっていきます。母親は言葉が通じなことを良いことに嫁に向かって笑顔で「いいかよく聞け虫けら」ともはや人間扱いせず、しかしそれを笑顔で聞いてる嫁。しかし自分を侮蔑してることはわかってるので顔に一切出さず感謝の体で英語で罵る嫁。非常に面白くて怖い展開でした。

お嫁さんは笑顔満点でよくわからないけどがんばります感出しておきながら意外としたたかさを持ってるのが、今作ゾッとするところでもあります。

そして終盤。これがベースになっての映画屈指の名場面が待ってました。
ある衝撃展開で下半身が動かず声も出なくなった母親。関係は最悪になっている嫁にある頼み事をするのですがそれが渾身のジェスチャーゲーム!さもすれば数秒後に殺し合うくらいのお互い殺意があるのにジェスチャーゲーム!すごい展開だ!

嫁が予想したことに「それ!」と正解を出す母親。緊迫した展開で笑うところでないのにバラエティ番組並のリアクションに思わず笑ってしまいます。しかし同時に泣けてくる!今母親は意思を通じさせることに命がけなのです!

そしてこのジェスチャーゲームで伝えたかったこととは。。それは非常に悲しい日本の民話でした。

豪雪地を母親をおんぶして歩く嫁さん。死を覚悟する母親。しかしそこで明かさせる秘密にピュアなまでに女性としてわかりあえる二人。豪雪地という圧倒的な絵面により非常に神秘的なものでした。

こんだけ女性を侮蔑しながらも最後は女性でしか分かり合えない展開になってるとは。。スゴイなと言うしか無い。

出てくる役者全員魂を感じましたし、なにしろこの作品を映像化させたことがすごい!
作り手の魂を感じる映画でした。

データ

製作年:2018年
上映時間:137分
監督:吉田恵輔
キャスト:安田顕/ナッツ・シトイ/河井青葉/ディオンヌ・モンサント/ディオンヌ・モンサント/品川徹/田中要次/伊勢谷友介/木野花

リンク

映画.com

予告

心に残ったロケ地

主人公が働いているパチンコ屋
新潟県長岡市小国町「P・ステーション小国店」

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