おすすめ度
兄弟・姉妹という己の人生にとって特別過ぎる関係を見事に表現。
おすすめ度:★★★★☆【4点】
あらすじ
印刷会社の営業マンとして働く真面目な青年・金山和成は、乱暴でトラブルばかり起こす兄・卓司の存在を恐れていた。そんな和成に思いを寄せる幾野由利亜は、容姿は悪いが仕事ができ、家業の印刷工場をテキパキと切り盛りしている。一方、由利亜の妹・真子は美人だけど要領が悪く、印刷工場を手伝いながら芸能活動に励んでいる。そんな相性の悪い2組の兄弟姉妹が、それまで互いに対して抱えてきた複雑な感情をついに爆発させ……。
引用元:映画.com
感想
記憶に残る作品を連発してる吉田恵輔監督作品。
前2作は漫画原作ものだったが「麦子さんと」以来のオリジナル脚本で期待は高まる作品。
正反対の兄弟・姉妹を軸に切っても切れない関係をなんとも嫌らしく映し出していきます。
自分は兄がいますが大人になって感情をぶつけたことがあるかと言えばほとんどありません。正直気にもしない時もあります。。と言いながら実は意識してるでしょと掘り下げてくるのがこの映画。兄弟・姉妹がいれば誰もが抱える各々の家庭による他人には知られたくないしどうせ理解もされない関係性。
中盤飲みのシーンで、自分は自分の兄・姉に文句を言いますが、相手がそれに同調して自分の兄・姉を貶し始めるとイヤそうじゃないよとやんわり否定します。この「兄・姉を貶していいの自分だけ!」という感情わかります。
この特別な感情は他でもあり、例えば自分は大人気漫画「ONE PIECE」をずっと愛読していますが正直文句が言いたい事が多々あります。しかしそれを目の前の人間が同調して文句言い始めたら「てめえに何がわかるんだー!」と瞬間湯沸かし器のように感情的になり相手を締め上げてしまうかもしれません。
自分の中で唯一無二の存在だからこその感情。飲みのシーンはそれをサラッと表現してて良かったです。
今作の注目部分でもある姉役を演じた芸人ニッチェ江上。これが芸人とは思えない素晴らしい演技でびっくり。いや芸人だからこその表現豊かな演技だったのかもしれない。芸人前は女優を目指していたというだけあって本人は並々ならぬ思いもあったのではないでしょうか。
監督もお気に入りなのか江上を上手く調理し、特に遊園地でテンションが上った際に後から足された豚鼻効果音!江上のドアップと監督の意地悪なスパイスが見事に融合した大爆笑シーンでした!
その他劇中2回あるお見事な吹き出しシーンや、自分の部屋で他人には絶対見られたくないトランス状態での意味不明ななりきりダンス。最高!
主人公は真面目な青年でありながら実は劇中一番最悪な性格という二面性を窪田正孝が熱演。同僚に「さっき人殺しそうな顔してました」と実際その時の顔は映らないのだが見る側にそれを想像させてしまう演技がお見事。そしてその演出を考えた監督も素晴らしい。
新井浩文と筧美和子ももちろん良かったです。ただ筧美和子は最後の泣きシーンで江上と演技の差が如実に出てしまいちょっともったいなかった。
この難しく表現しにくい特別な関係をうまく見せていき、そこに監督ならではのスパイスを散りばめなんとも稀有な作品に仕上がっています。上映時間が短いのも好感。
あと映画の出だし、見る側を驚かしすぎでしょ!かなり焦りました!
データ
製作年:2018年
上映時間:103分
監督:吉田恵輔
キャスト:窪田正孝/新井浩文/江上敬子/筧美和子/阿部亮平/木村和貴/後藤剛範/土屋美穂子/健太郎/竹内愛紗
リンク
予告
心に残ったロケ地
デートシーンで撮影
富士急ハイランド
〒403-0017 山梨県富士吉田市新西原5-6-1