人を殺してはいけない理由【友罪】

人を殺してはいけない理由【友罪】

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おすすめ度

瑛太の繊細な演技に心が鷲掴みにされる
おすすめ度:★★★★☆【4点】

あらすじ

ジャーナリストの夢を諦めて町工場で働き始めた益田は、同じ時期に入社した鈴木と出会う。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避けている様子だったが、同じ年の益田とは少しずつ打ち解けていく。しかしある出来事をきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人なのではないかと疑いを抱くようになり……。
引用元:映画.com

感想

なかなか幅広いジャンルながらも一環としてヒューマンドラマを撮り続ける瀬々監督。

予告はかなりミスリードで、世間を騒がせた「少年A」の事件をなぞる話なのかと思いきや、人を殺してしまった本人・父親・友人など三者三様別々の話として話が進み、その他AVに出演した女性や現在起きた事件などが絡み合っていきます。

劇中でも語られますが、人を殺してはいけない理由は【罪】を背負うこと。
いつまで背負わなきゃいけないのかいつまで苦しまなくてならないのかと、もがきながら死ぬまで背負う最大の罪が【殺人】

多くの作品で人を殺して罪に苛まれているシーンはなかなかありませんが、実際は人を殴っただけでもしばらく消えない苦しみを感じるはず。

ちょっと脱線しますが、その描写が非常にうまく描かれているのが森恒二の漫画「ホーリーランド」。人を殴ることで苦しむ主人公を読んで衝撃的でした。同じく森恒二作品「自殺島」でも生きるために鹿を殺すのですが、さっきまで生きていいた鹿を殺したことにかなりの間苦しまれる主人公が丁寧に描かれています。

今作「友罪」はその苦しみにもがき続きながらも、友人が殺人者だったらどうするという問題も投げかけています。

少年時代に殺人を犯した役を瑛太が演じ、その歪んだ人生を歩みコミュニケーション能力が低下した役を素晴らしい演技で観せていきます。人と接するのを避けるがおどおどしてるわけでなく常に冷静。ただ感情の表現が乏しくラストシーン泣いてるのか笑ってるのかわからない罪に押しつぶさる場面は圧巻の演技でした。あれはどんなことを考えて演じたのだろうか。すごい演技でした。

また「殺してくれよ。殺すのは簡単なんだよ。ホラ!ホラ!」と自分の頭を石でガンガンするシーンはあまりにも痛々しく目を背けるほどのリアルな演技。瑛太すごいわ。

生田斗真演じるもうひとりの主人公は、殺人を犯していないものの友人が自殺してしまったことにずっと悩まされてます。なんでそんなにと思いますが実はもう少し深い話がありそれは劇中明かされていきます。

佐藤浩市演じるタクシードライバーは息子が小さい頃人を殺してしまい、何年立っても殺してしまった家族への償いを行っていますが、その都度ひどい仕打ちをくらい、辛く惨めな思いに胸が締め付けられます。そしてさらに息子は子供を作り家族を築こうとしその事にも悩み苦しまれていきます。

罪を背負いきれない人間としてタクシードライバーの息子が描かれています。人を殺しても自分は幸せになりたいと。この選択は当然なのかありえないのか観てるこちら側も悩み逡巡します。

そして先程人を殺してはいけない理由を【罪】と書きましたが、当然【罪】を理解していなければ人を殺してしまいます。だからこそ人生経験乏しい少年期に殺人を犯してしまうのかもと投げかけ、合わせて親の存在意義をも浮き上がらせてきます。

もし子供に「なんで人を殺してはいけないの?」と言われた時どれだけ説明できるのだろうか。
人はいつ罪を知っていくだろう?それは人々が本を読めというのが正解で、本・映画・テレビいろいろな作品に触れ背負ってはいけない【罪】を知っていきます。

そしてこの映画はそれの最たる作品なんだと思う。

データ

製作年:2018年
上映時間:129分
監督:瀬々敬久
キャスト:生田斗真/瑛太/佐藤浩市/夏帆/山本美月/富田靖子/奥野瑛太/飯田芳/青木崇高/光石研

リンク

映画.com

予告

心に残ったロケ地

青柳の殺害現場の一つ
茨城県高萩市さくら宇宙公園

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