あゝ荒野

おすすめ度:★★★★★【5点】

前編後編をDVDで一気見。

しかし10月に公開された2作が翌月にはDVDやネット配信とはどういう魂胆なのだろうか。たしかに年々映画公開からDVD化が早くなってた気がするが今回極端すぎる。DVD派の自分は嬉しかったが映画観た人はどう思ったのだろう。

半世紀前の原作を現代に置き換え、さらに2021年に設定しオリンピック後の日本を合わせている。原作をちょっと立ち読みしたが純文学な感じに俺には無理かもとそっと戻しました。。ただ濃厚な感じが伝わり映画への期待が増しての今回の一気見。

前編157分、後編147分と稀に見る長さ。しかし見始めると主役2人に引き込まれ苦痛を感じることは無い。全体的に見れば大きい展開はないし新宿裏側で完結してしまう小さいお話なのにそれを5時間空きずに見れるのはすごい。

立て続けに主演映画が続き脂が乗ってる菅田将暉、ラジオを聞くに漫画好きの明るい兄ちゃんにしか思えないのだが演技はほんとすごい。「共食い」の時からこいつ何歳だよ驚かされた。濡れ場やボクシングシーンも野獣のようで身体全体から鋭利なものを感じます。対象的にヤン・イクチュンは「息もできない」の時に感じた鋭利なものから優しさがにじみ出る人間に様変わり。人間こうも変わるかとびっくり。朴訥な感じで吃音がはまり役だった。

物語はボクシングを軸に親と子という切り離せない運命「血」を色濃く受け止められます。意図的に競馬が出てきたりラストの会場で主要3人の親が揃うのはその意味かなと。そしてどうでも良いと思ってた親父の死に対しても最後はふつふつと感情が出ての結末だったのかもしれない。

今回の結末は非常に驚きもあり、なぜという気持ちもある。
最後バリカンの意志は新次への強烈なホモソーシャルな思いだったのかもしれない。女性との繋がりを拒んでいたのでホモセクシャルと思えがちだが映画全体から見るにそこには落とさないだろう。ボクシング自体そういう要素は常にあると思う。

そしてリング上では殺しても良いという意味が最後は変わっているのも考え深い。

ボクシングシーンはとにかくリアル。1試合に数日かけたのも納得のいろいろな角度からショットで臨場感がスゴイ。汗も飛び散りまくりで迫力が増してた。

あと外せないのが映画全体にある強烈な濡れ場の数々。今をときめく菅田将暉のお相手が無名とも言える木下あかりでなぜなんだろうと思ったが見て納得。「私脱いだらスゴイんです」を地で行くナイスバディ。見た目は競馬界のチャンチーこと細江純子そっくりで地味丸出しなのだが濡れ場はスゴかった。

あと脱ぐまで気づかなかったグラビアアイドル今野杏南。現時点でも大人気なのによく脱いだなと。濡れ場3人目の河井青葉は他の映画ではもっと激しい濡れ場に挑戦してるけど今作は生々しくこれはこれでとても良い。

そしていなさそうでいそうな濃いキャラを演じた高橋和也。「このおっさんもうすぐ完全体だな」とか「振り向くな振り向くななうしろには夢はない」など意外と名言を発しており記憶に残るキャラです。ちなみに「振り向くな振り向くななうしろには夢はない」の後にユースケ・サンタマリア演じる片目が「うしろには夢だらけ」ていうやりとりも良かった。この片目も飄々としながらも影がある佇まいが良かった。

自衛隊やテロ・自殺などの不安だらけの国家を描いているのは少々詰め込み過ぎかなと。ただしっかり描ききっているので蛇足感はない。ボクシング映画としても秀逸だが人間ドラマとしても生々しさを感じる秀逸な映画でした。


製作年:2017年
上映時間:前編157分/後編147分
監督:岸善幸
キャスト:菅田将暉/ヤン・イクチュン/木下あかり/モロ師岡/高橋和也/今野杏南/山田裕貴/河井青葉/でんでん/木村多江/ユースケ・サンタマリア

【リンク】
映画.com 前編
映画.com 後編

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