おすすめ度
キャスリン・ビグローらしい見るものを引き込む緊迫感
おすすめ度:★★★★☆【4点】
あらすじ
67年、夏のミシガン州デトロイト。権力や社会に対する黒人たちの不満が噴出し、暴動が発生。3日目の夜、若い黒人客たちでにぎわうアルジェ・モーテルの一室から銃声が響く。デトロイト市警やミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊たちが、ピストルの捜索、押収のためモーテルに押しかけ、数人の白人警官が捜査手順を無視し、宿泊客たちを脅迫。誰彼構わずに自白を強要する不当な強制尋問を展開していく。
引用元:映画.com
感想
現場の緊迫感を極限まで突き詰めるキャスリン・ビグロー監督作品。
今作も凄かった。
67年デトロイトになぜ黒人が多く集まったのかという時代背景を紙芝居的に見せ、導入はなかなか丁寧。何故暴動が起きたという流れも上手かった。
そして白人警官と黒人の対立がしっかり出来上がったところで今作のメインである「アルジェ・モーテル事件」が始まります。
最初は黒人側のおふざけから引くに引けないところまで行ってしまい最悪の結果を生み出してしまう。狂気の沙汰。無力の黒人は壁に立たされ銃を持つ白人警官の胸三寸で数秒後の命がわからない。その緊迫感たるや見る側も生きた心地がしません。そして警官側。というより銃を持っている側でも立場の違いで駆け引きとボタンの掛け違いで泥沼化に。この極度の緊張感・緊迫感は映画史に残る40分です。
主人公を新スターウォーズシリーズで活躍してるジョン・ボイエガが熱演。黒人ながら警備員ということで銃を持ち、警官側の抑止力として現場に居合わせます。本人自身はこの争いがいつか終わってほしい黒人と白人がうまくいってほしいと思っている。そういう思いは口に出さずともそこまでの行動で見て取れます。そして自分は間違ったことはしていないという信念も感じられます。
それが木っ端微塵に砕かれる警察署での尋問シーン。正しいことしていれば問題ないという堂々たる立ち振舞から警官と話が全く噛み合わない。いや警官の描くストーリーしか存在しないことに気づいた時の恐怖に慄くシーンは圧巻。今までの自分の考えの無意味さ悲しさ絶望さが入り混じりあわあわと震え始めます。ジョン・ボイエガすごい演技だ!
またこの尋問シーン。よく見ると壁の一箇所が微妙に赤黒くなっているのがこの部屋の怖さを醸し出しています。たぶんあの壁に多くの無抵抗者が頭を打ち付けられたんでしょう。お見事な演出。
終盤は法廷シーンになりますがその顛末は主人公が階段でする行為と同じ気持ちになりました。
そして映画では白人の一方的な暴力支配と黒人側の暴動に終りが見えませんが、結局50年を得た「現在」も進行しています。
データ
原題:Detroit
製作年:2017年
上映時間:142分
監督:キャスリン・ビグロー
キャスト:ジョン・ボイエガ/ウィル・ポールター/アルジー・スミス/ジェイコブ・ラティモア/ジェイソン・ミッチェル/ハンナ・マリー/ケイトリン・デバー/ジャック・レイナー/ベン・オトゥール/ネイサン・デイビス・Jr./ペイトン・アレックス・スミス/マルコム・デビッド・ケリー/ジョセフ・デビッド=ジョーンズ/ラズ・アロンソ